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思考する生活 Life of Thinking 第二回目『メガネ買い替え奮戦記(メガネは顔の一部なのか!?)』

つい1ヶ月ほど前、私はメガネを買い替えた。コロナ渦でオンラインでの打ち合わせをはじめパソコンに向かう時間が多くなり一気に視力が落ち、加えて老眼も一気に進んだからだ。
今まで私は眼鏡量販店のコストパフォーマンスが高いメガネを使用し続けていた。
次の眼鏡も眼鏡量販店で購入しようと思いネットで訪店予約をしようと検索しているととある記事が目に飛び込んで来た。

“メガネを変えて、自分自身をプロデュース、こんなにも違うあなたの印象”

私は記事を読み進めていった。そこで眼鏡コンサルタントなる存在を知った。どうやら私の大好きなマルチクリエイターのいとうせいこう氏も購入する度に眼鏡コンサルタントに相談しているそうなのだ。
『眼鏡なんぞは視力を矯正するためのモノでとにかく支障なく見れるようになればいいのだ』という固い信念がグラついてきた。
メガネコンサルタントと検索すると数件の検索結果が出てきた。
そして、近所に眼鏡コンサルタントがいる眼鏡屋を見つけたのだ。
ホームページを開くと下記のコピーが飛び込んで来た。

“完全予約制、1人1人にあった眼鏡が必ず見つかるコンサルティングをします”

そこに値段の事は一切触れていない。
やや怖い気もしたがバカ高いメガネしか売っていないのであれば逃げればいいのだと自分に言い聞かせコンサル眼鏡店の来店予約をした。

静謐な住宅地にひっそりと佇む店の門構えはまるでアートギャラリーのようである。
入り口に設置された呼び鈴を鳴らすと店員が出迎え、指定された席に着席すると今度は執事のような(たぶんアシスタントと思われる)別の人が香り漂うコーヒーを運んできた。(コーヒーが出てくる眼鏡屋なぞはじめてである、リラックスするどころか逆に緊張してきた)
コーヒーをすすって数分待つと、眼鏡コンサルタントの女性が奥の部屋から颯爽とあらわれた。
<当然のことながら店員もコンサルタントさんも眼鏡をかけている:話は脇道に外れてしまうが、視力が良いと、眼鏡屋の店員にはなれないのだろうか?>
「こんにちは、コンサルタントの花形(仮名)と申します。本日は貴重なお時間を頂きましてありがとうございます」
慇懃な挨拶からはじまった。
そして一連の流れを説明してくれた。
*インタビューを受けてのコンサルティング→眼鏡をプレゼンテーション→度数を測り制作

インタビューが始まった。
花形:人からどのようなイメージで見られたいですか?
わたし:うーーーん(別に芸能人でもないし、自意識過剰でもないし、正直そんなのどうでもいい)
花形:普段の服装の傾向をおしえてください。スーツとかカジュアルとか、、
わたし: 時と場合によります。
花形:仕事の内容を出来れば詳しく教えて下さい。
わたし:(なんで初対面の人に転職面接のようにそんなことを教えなければならないのだ!)クリエイティブ系ですかね、、(苦笑)

最後に年齢を聞かれた。(ある程度の年齢になると歳は聞かれたくないものだ)
心の不快指数が少しばかり上昇してきた。

今度は今使っているメガネの個数を聞かれた。
私は、今しているのだけです、と答えた。
「メガネは複数個持っていた方が良いですね」とさらっと言われた。
この発言を持って私のネガティブ思考のエンジンがかかり始めた。
『どうせ、私は一つしか持ってませんよ、、』

次に、メガネをあずけた。
「なぜ今のメガネにしたのですか?」と聞かれた。
これまでのやり取りから『安くて見た目がまぁまぁなんで買いましたー』なんて事は雰囲気的に言えず最寄駅に近い店でたまたま買ったと伝えた。
ここで私の見栄っ張りな側面が出てきた。

その後、私は矢継ぎ早に繰り出される10個ぐらいの質問に答えた。
一覧のコンサルティングが終わると、花形さんは店内にあるメガネ棚から数秒でササっとメガネを10個ほどセレクトして持ってきた。
「世界中から仕入れたメガネからインタビューを元にセレクトしました。さぁ、
俳優になった気持ちで役を演じる気持ちになってメガネをかけて鏡を見てください」と仰った。

内心、は〜っ、は、俳優、、役を演じたのなんて小学校の学芸会いらいやってないぞ、と思いながらも
自分は俳優だ、自分は俳優だ、と心に言い聞かせ、花形さんの解説を一つずつ受けながら提案されるメガネをかけて鏡に映った自分の顔と睨めっこをし続けた。
どれも全くピンとこない。

わたしは”うーーーんっ”と思わず声を上げてうなってしまった。

しばし気まずい無言の空気が店内を支配する、、

改めて店内を見回すと、棚には無数のメガネがある。

わたし:あのー、(提案された以外の)他の眼鏡も試していいですか、、
花形:いいですよ、
私は店内から、『これはもしかすると、良いかも、、』と思ったメガネを花形さんに伝えた。

そしてメガネをかけ、鏡を覗いた瞬間に
「あ、似合わないですね、、全く」
と言われてしまった。
私は返す言葉がなく黙ってしまった。

『おい、客をなんだと思ってるんだよー、メガネ原理主義者!』と心の声が私の脳内を駆けまわったのであったが、小心者の私はそんな事は口に出してなど言えず
「そうですよねー、似合いませんよねー」と返した。

この空間からいち早く脱出しようと思い時計を見るフリをした。
「あ、すみません、次の予定がありまして」
私はいつもより大きな声で言うと、そそくさと店を後にした。

それからの3週間ほど私の日常は眼鏡屋めぐりの日々となった。
何百個のメガネフレームを見ているとどんどんと目が肥えてきた。
そして、私好みのメガネメーカーを発見し直営店を突き止め私は店に向かった。

直営店に入って数分を経たのちに店員が「もしよろしければ最新鋭のフィッティング診断マシーンがありますのでお試しになりませんか?」と話しかけてきたので、私はマシーンを試すことにした。

欲しいメガネが3つに絞られた。

私が迷っていると店員はこう言った。
「人からどのようなイメージで見られたいですか?」
あれ、これメガネコンサルタントと同じじゃない?
続いて「メガネを変えると印象が変わりますから、周りの方もびっくりされますよ」
と畳みかけてきた。

私はなんだか、メガネコンサルと一緒だなぁと思いつつも眼鏡をかけた鏡を見ているうちに、『そうかメガネを変えるだけで周りからの印象も変わるのか』と気分が高揚してきた。

そして私は、眼鏡を新たに購入した、しかも当初予算の数倍を費してしまった。
しかしながらこれで印象が変わるのであれば安いものだ、私の眠っていた変身願望がグングンと芽生えた。

現在メガネを新調してから1ヶ月が経つ。
しかしながら、眼鏡を変えたことに関して誰一人として言ってくれない。
『あれ、私の印象、相当変わったんじゃないの、私のイメージ変わったよね!?』
なんで誰も一言も言ってくれないの?

“我にかえったわたしは自意識過剰を煽り変身願望をくすぐるビジネスモデルにハマったのに気づいたのであった。

昔、とある眼鏡屋さんのコマーシャルがあった。
“♪メガネは顔の一部です、だから**メガネ♪

今もって素晴らしい広告コピーである。

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