思考する生活 Life of Thinking 第二十四回目 昭和のノスタルジー サザエさん

現在、日本は超高齢化社会にあるといわれているが世界の他の国々と比べて、いったいどれくらい高齢なのか?と思いさまざまな統計データに目をとおしてみた。

日本の平均年齢は2020年時点で48.4歳と世界で2番目に高く、世界一平均年齢が高い国はヨーロッパの小国、モナコ公国で53.8歳であった。
3位はドイツで47.4歳であった。
ちなみにアメリカと中国は平均年齢がともに同じで37.4歳、世界ランキングは40位であった。
世界の平均年齢は30.9歳だそうだ。

今から50年前の日本の平均年齢は30歳そこそこであったことも知った。
もしタイムマシンで50年前の日本にいくことが出来たとしたらそこは若者ばかりの国であるのだ。

日本人の平均年齢が30歳そこそこの時代、1969年に放送を開始し今年で54年目を迎えるサザエさん。
老若男女ほぼ全ての日本国民が知っている番組だ。

一家のプロフィールは主人公のサザエさん24歳、旦那のマスオさん28歳、サザエさんの父である波平さん54歳、波平さんの妻フネさんは50歳代である。
平均年齢30歳そこそこの当時の日本社会では典型的な家族構成であろう。

サザエさんとその周りの登場人物と2023年現在の私たちとを比べてみると、画面上のサザエさんたちがとても老けて見える。
波平さんの貫禄あるルックスはどうみても60歳代後半にしか見えないし、サザエさんも貫禄があり過ぎてこんな24歳はいないであろう。
唯一、子どもたち(カツオ、わかめ、タラちゃん)は2023年の現在でも年相応に見える。
ただし、髪型だけはレトロである(ただし、わかめの刈り上げは今や2ブロックと言われている流行りのヘアスタイルである、流行は繰り返すのである)

私は中学生の頃まではオンタイムでサザエさんを見ていたし当時コミックで出版されていたマンガサザエさんの愛読者でもあった。

先日、久しぶりにテレビでサザエさんを見た。
昔はたしかスポンサーが1社提供であった。(たしか東芝であった記憶がある、、定かではないが、、)
今は複数社の提供となっている。
もはや1社で1番組をスポンサードする時代ではないのだ。

令和のサザエさんは声優たちが一新されていた。
それはそうだ、今年で放送から56周年を迎えるのであるから私が少年時代に耳にしていたキャストたちはすでに鬼籍に入っているのだ。
唯一、タラちゃんだけは昔の声のままであった(当時の声優さんかどうかは私には識別がつかなかっただけのことであって代替わりはしていることであろう)
飼い猫のたまの歩く時の効果音も同じであったことをここに記しておこう。

声優が変わってもサザエさんの世界は昔と全く変わっていなかった。

立派な門構え、木造モルタルと思われる家屋、家の玄関にある黒電話の存在感。
茶の間には大きめの丸いちゃぶ台、そして長いしっかりとした足のついた家具のようなアナログテレビが設えてある部屋で2世代が団欒をしているところから物語は始まる。

もちろんコスチュームも全く変わっていなかった。
波平さんは仕事の時はスーツを見に纏い、家では和服を着ている。
もちろん、波平さんの奥さんであるフネさんも和服である。
男性陣が外出の際はほぼ必ず帽子をかぶる。

サザエさんの家庭は東京都世田谷区の桜新町という街にある。
この桜新町というところ、私の今の住まいの近所なのだ。

通っている歯医者がこちらにあり定期的に訪れるのであるが、もはやこの街には門構えのある木造モルタルの家屋など皆無だ。
また街をあるいているシニア層で和服を着ている人になぞ出会ったことなど一度もない。

番組が始まった頃は、時代を写す鏡のようなオンタイムな番組であったサザエさんはいつのまにか昭和時代のレトロなアニメーション劇になってしまったのである。

ここでサザエさんキャクターを令和時代に合わせてみよう。
まず住まいは親と娘夫婦が同居しているので2世帯住宅である。
鉄筋コンクリート造りで入り口がそれぞれ違うはずである。

リビングも別々であろう。
たまに、娘夫婦が親の部屋を訪ねてくることもあろう。
その際の部屋のしつらえもフローリングの床にテーブルと椅子、そしてソファがあるかもしれない。
親の部屋にある電話も決して黒電話ではない、オフホワイトのファックス一体型の子機
がついているそれであろう。

次に服装、
波平もフネも和装などでは決してなかろう。
波平の普段着はポロシャツもしくはゴルフシャツであろう。
カツオは野球帽を被っていることが多いが昭和時代のプロスポーツは野球しかなかった故に野球帽である。今はプロ野球球団の帽子をかぶっている確率は低い。
サザエさんが買い物に出かける際はエプロンのままで商店街に出かけることが多いが、今や決してそんなことはなかろう。

こんな令和のリアルなサザエさん、誰が見たいと思うであろうか?

皆が見たいサザエさんは昭和のサザエさんであるのだ。
高度成長のなかで皆が明るい未来を夢みている希望に満ちた社会なのだ。

今から50年以上前の昭和40年代にはじまったサザエさんはいつのまにか時代劇になってしまった。
一体、いつまで続くのであろうか?

先ほど述べたようにサザエさんは再開発を繰り返す街“東京”に住んでいる。
近所を散歩しているとたまにサザエさんの家のような門構えのある木造家屋に出くわすことがある。
しかしながらその多くは悲しいかな廃屋である。

サザエさんが永遠に続いて欲しいような、続いてほしくないような微妙な感慨に浸っているのは私だけではなかろう。

増村岳史

アート・アンド・ロジック株式会社  代表取締役
増村 岳史 / Masumura Takeshi
大学卒業後、株式会社リクルート入社。マーケティング、営業を経て映画、音楽の製作および出版事業を経験。
リクルート退社後、音楽配信事業に携わったのち、テレビ局や出版社とのコンテンツ事業の共同開発に従事する。2015年アートと人々との間の垣根を越えるべく、誰もが驚異的に短期間で絵が描けるART&LOGIC(アートアンドロジック)を立ち上げ、現在に至る。著書に『ビジネスの限界はアートで超えろ! 』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)『東京藝大美術学部 究極の思考』(クロスメディア・パブリッシング)がある。

関連記事

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。